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それって虐待では?知っておきたい障害者虐待防止法

福祉で働くために理解しておくべき3つのポイント

障害者虐待と聞いて、自分には関係ないと思う人がほとんどだと思います。
ですが、自分は大丈夫でも周りはどうでしょうか?そして普段の行動や声掛けはどうですか?気づかないうちに人を傷つける事って意外とあるものです。
ここでは
虐待の内容
発見するためのサイン
見るべきポイント
について紹介していきます。
実地指導でも虐待防止研修は必ず確認されます。
是非、あなたの施設でも話し合いや振り返りを行ってくださいね。

障害者虐待防止法とは

法の定義

障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律)は、障害者の権利や尊厳を脅かす虐待を防止するとともに、障害者を養護している者が介護疲れ等を原因として虐待を行わないよう、養護者への支援をしていく法律になっています。障害者が安心して社会で暮らせるよう、障害者とその家族を地域皆で支え合い、虐待の防止に取り組むという法律です。

対象となる障害者

障害者虐待防止法では、身体障害、精神障害(発達障がいを含む)のある人や、その他に心身の障害や社会的障壁(社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの)によって、日常生活・社会生活が困難で援助が必要な人となります。障害者手帳を取得していない方も含まれます。

障害者虐待3種類

養護者による障害者虐待
「養護者」とは、障害者を養護する者であって障害者福祉施設従事者等及び使用者以外の者を指し、身辺の世話や金銭の管理等を行っている障害者の家族・親族・同居人等を指します。また、同居していなくても身辺の世話をしている親族・知人等が養護者に該当する場合もあります。
原因としては、介護やお世話に対してかかるストレスの捌け口となってしまう場合や、養護者の知識不足からくる、無意識の虐待が多くみられます。
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
「障害者福祉施設従事者等」とは、障害者総合支援法に規定する障害者福祉施設又は障害福祉サービス事業等にかかる業務に従事する人を指します。障害者福祉施設・障害福祉サービス事業等に該当する施設は障害者支援施設、生活介護、就労継続支援、就労移行支援、移動支援、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援、相談支援事業等があります。
施設で起こる虐待は、閉鎖性のある環境で教育・知識・技術の不足が招いています。きちんと研修を行い、職員間で情報交換をすることで、防げる事案が多くあります。日常的にカンファレンスを行うことで、職員の不満や困りごとを解決、軽減する事も大切ですね。
使用者による障害者虐待
「使用者」とは、障害者を雇用する事業主又は事業の経営担当その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする人(工場長、人事担当者等)を指します。
虐待者が指導・しつけ・教育の名のもとに不適切な行為を行っている場合がありますので、直接関わらない人が監督・監視の機能を担うことも必要になります。

障害者虐待を疑うときは

「虐待かも知れない?」という場面に直面したとき、親の立場になって考えてしまったり、障害者福祉施設の職員であれば自身も支援の難しさに直面していたりして、通報はできないと思うかもしれません。
だからこそ通報して必要な支援を行うために、関わるきっかけを作る事が大切になります。
また、障害者虐待防止法では、障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した人(虐待の疑いに気がついた人)は、市町村に速やかに通報する義務があります。通報しないという選択はなく、通報しなければいけないのです。

情報の保護

障害者虐待防止法では、通報を受けつけた市町村職員は「その職務上知り得た事項であって当該通報又は届出をした者を特定させるものを漏らしてはならない」とされています。
また、施設従事者が通報した場合は「通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けない」さらに、労働者が通報した場合は、「通報又は届出をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けない」とされており、通報又は届出者を保護することが規定されています。
「虐待かも?」と思ったら、あなたは保護されている事を思い出し、ためらわずに通報してください。

どんな行為が虐待?

身体的虐待

  1. 暴力や体罰(平手打ちする ・殴る ・蹴る ・壁に叩きつける ・つねる ・無理やり飲食物を口に入れる ・やけど ・打撲)によって身体に傷やあざ、痛みを与える
  2. 身体拘束(正当な理由なく柱や椅子やベッドに縛り付ける、医療的必要性に基づかない投薬によって動きを抑制する、ミトンやつなぎ服を着せる、部屋に閉じ込める、施設側の管理の都合で睡眠薬を服用させる等)

性的虐待

  1. 性交、性器への接触を強要する
  2. 裸にする
  3. キスする
  4. 本人の前でわいせつな言葉を発する
  5. わいせつな映像を見せる
  6. 排泄や着替えの介助がしやすいという目的で、下半身を裸にし、下着のままで放置する

心理的虐待

  1. 「ばか」「あほ」など侮辱する言葉を浴びせる
  2. 怒鳴る
  3. ののしる、悪口を言う
  4. 仲間に入れない
  5. 子ども扱いする
  6. 人格をおとしめるような扱いをする
  7. 話しかけているのに意図的に無視する

放棄・放置(ネグレクト)

  1. 食事や水分を十分に与えない
  2. 食事の著しい偏りによって栄養状態が悪化している
  3. あまり入浴させない
  4. 汚れた服を着させ続ける
  5. 排泄の介助をしない
  6. 髪や爪が伸び放題
  7. 室内の掃除をしない
  8. ごみを放置したままにしてある等劣悪な住環境の中で生活させる
  9. 病気やけがをしても受診させない
  10. 学校に行かせない
  11. 必要な福祉サービスを受けさせなかったり、制限したりする
  12. 同居人による身体的虐待や心理的虐待を放置する

経済的虐待

  1. 養護者又は養護者以外の親族が年金や賃金を渡さない
  2. 本人の同意なしに財産や預貯金を処分、運用する
  3. 日常生活に必要な金銭を渡さない、使わせない

虐待のサインに気づこう

次の表は、障害者虐待を早期に発見するためのチェックリストです。
これらはあくまで例示なので、完全にあてはまらなくても、類似していれば障害者虐待の疑いがあります。

身体的虐待のサイン

身体に傷が頻繁にみられる
回復状態がさまざまに違う傷、あざがある
お尻、手のひら、背中等に火傷や火傷の跡がある
「こわい・嫌だ」と施設や職場へ行きたがらない
傷やあざの説明の辻褄が合わない
手をあげると、頭をかばうような格好をする
おびえた表情をよくする、急に不安がる、震える
自分で頭をたたく、突然泣き出すことがよくある
医師や保健、福祉の担当者に相談するのを躊躇する
医師や保健、福祉の担当者に話す内容が変化し、つじつまが合わない

性的虐待のサイン

不自然な歩き方をする、座位を保つことが困難になる
肛門や性器からの出血、傷がみられる
性器の痛み、かゆみを訴える
周囲の人の体をさわるようになる
卑猥な言葉を発するようになる
ひと目を避けたがる、一人で部屋にいたがるようになる
医師や保健、福祉の担当者に相談するのを躊躇する
眠れない、不規則な睡眠、夢にうなされる
性器を自分でよくいじるようになる

心理的虐待のサイン

かきむしり、かみつき等、攻撃的な態度がみられる
不規則な睡眠、夢にうなされる、眠ることへの恐怖、過度の睡眠等がみられる
身体を萎縮させる
おびえる、わめく、泣く、叫ぶ等パニック症状を起こす
食欲の変化が激しい、摂食障がい(過食、拒食)がみられる
自傷行為がみられる
無力感、あきらめ、なげやりな様子になる、顔の表情がなくなる
体重が不自然に増えたり、減ったりする

放棄・放置(ネグレクト)のサイン

身体から異臭、汚れがひどい髪、爪が伸びて汚い、皮膚の潰瘍
部屋から異臭がする、極度に乱雑、ベタベタした感じ、ごみを放置している
ずっと同じ服を着ている、汚れたままのシーツ、濡れたままの下着
体重が増えない、お菓子しか食べていない、よそではガツガツ食べる
過度に空腹を訴える、栄養失調が見て取れる
病気やけがをしても家族が受診を拒否、受診を勧めても行った気配がない
学校や職場に出てこない
支援者に会いたがらない、話したがらない

経済的虐待のサイン

働いて賃金を得ているのに貧しい身なりでお金を使っている様子がみられない
日常生活に必要な金銭を渡されていない
年金や賃金がどう管理されているのか本人が知らない
サービスの利用料や生活費の支払いができない
資産の保有状況と生活状況との落差が激しい
親が本人の年金を管理し遊興費や生活費に使っているように思える

虐待防止の体制

障害者福祉施設等で働かれている方は、「いつでも虐待が発生する可能性がある」という視点をもつことが重要です。
「これぐらいどこでもやっている…」と思うことや「みんながやっているから…」ということはありませんか?
「虐待」と「虐待にはあたらない行為」を明確に分けることはできません。虐待が顕在化する前段階には表面化していない虐待や、不適切なケア等放置しておけば虐待として顕在化する「グレーゾーン」の行為があります。
虐待が発生する背景には、職員個人の知識や、経験不足等に起因する個別的要因と、個人の知識や経験不足を補うための研修体制がなかったり、またケアの質の向上のための組織的な情報共有の場を設定していなかったりすること等に起因する組織的要因があげられます。
障害者福祉施設等には、虐待を防止するための責務を負うことが定められています。では、虐待を防止するための策として、どのようなものがあるか、紹介していきます。
あなたが働いている施設では、虐待防止の体制が整えられていますか?

虐待防止体制のチェックリスト

職員の行動規範がある
虐待防止マニュアルがある
施設内に権利侵害防止の掲示物がある
緊急やむを得ない場合の身体拘束等の手続き、方法が定められており、職員に周知されている
設置者・管理者が、都道府県の障がい者虐待防止研修を受け、職員に対して伝達研修が行われている
定期的に、全職員向けの虐待防止研修が行われている
定期的に、適切な支援を行うための知識と技術を獲得するための研修が行われている
各部署に虐待防止マネジャーが決められている
虐待防止委員会がある

虐待防止のための取組み

あなたが働いている障害者福祉施設等では、虐待防止のための取組みが行われていますか?
実施状況を確認してみましょう。

虐待防止の取り組みチェックリスト

管理職が日頃から現場を把握し、不適切な対応につながるエピソードがないか、職員の配置は適切か注意を払っている
可能な限り同性介助を徹底している
利用者の金銭及び貴重品を預かっている場合、複数の職員によるチェック体制のもとに管理されている
職員が支援等に関する悩みを相談できる相談体制がある
事故・ヒヤリハット報告書を活用している
自己チェック表を活用している
苦情相談窓口を設置している
福祉サービス第三者評価事業を活用している
ボランティアや実習生の受入を積極的に行っている
未実施のものがある場合や、実施状況がわからない場合は、厚生労働省作成の「障害者福祉施設等における 障害者虐待の防止と対応の手引き」を参考に、職員会議等で話し合ってみてください。

まとめ

いかがだったでしょうか?
今回は障害者虐待について紹介しました。
障害福祉施設働く職員なら、必ず理解しておきたい虐待の種類や虐待のサインについて理解して頂けたと思います。
虐待のきっかけは、初めはちょっとしたからかいや冗談から始まる事が多いです。
誰しも自分は大丈夫という思いはあると思いますが、定期的な研修や風通しの良い職場環境で防げることや、気づけることが多くあるので、是非日頃から障害者虐待防止に取り組んでいってくださいね。
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